イエス・キリストの最後の七日間を全編ロック調ナンバーで描くミュージカル。作曲はアンドリュー・ロイド・ウェバー、作詞はティム・ライス。映像にもなっている。このページでは、1973年の映画版と2000年のニューステージ映像版を中心に勝手な感想などを書き連ねていく予定。
作品は、全編を通して音楽で進行する。歌以外の台詞はほとんどない。ロック・オペラと銘打っている。これが実は私が好きなところ。いわゆる「突然歌い出すミュージカル」も決して嫌いではないけれど、すべての台詞が巧みに音楽に乗っているのはやはり素晴らしい。その音楽が、全編名曲揃い。クラシック寄りの旋律も混じる、70年代ハードロック(多分)中心。ジーザス、ジューダスを筆頭に、みな存分にシャウトしてくれる。個人的には、この楽曲があのアンドリュー・ロイド・ウェバーの初期作というのはやや意外だった(意外というよりは、実に何でも書ける、天才としか言いようがない! とも思う)。しかしロック、クラシック、ジャズ、聖歌調など様々に織り交ぜられかつ巧みに交錯する音楽はとにかく素晴らしくて聞き飽きることがない。ダンスは多少あるが、これも必要最低限の趣き。ジーザスは決して踊らない。
「ジーザス・クライスト・スーパースター」。このタイトルはいわばアイロニーである。この作品は「イエス」を、あくまでも「人間」として描く。映画版は一見するとロックによる受難劇のようだが、これは決して宗教ものではないと思うのだ。むしろジーザス、ジューダス、マリー・マグダレン、それぞれの若者たちによって繰り広げられる愛と葛藤の青春ドラマ(笑)。ニューステージ映像版は青春ドラマといえるような爽やかな趣はないが、またかなり異なる視点で彼らの愛憎劇が描かれる。
ストーリー自体は、非常に乱暴に言ってしまうと、新約聖書そのままである。にも拘わらず、その表現は全く異なる。その間にある解釈がドラマティックなのである。宗教劇ではない。しかしながら、聖書を読んでいたほうが楽しめる。というよりも、それは常識として観客の頭の中に入っているものという前提で作られているのかもしれず、あまり聖書を読んでいない日本人がいきなり作品を見ると、展開に謎が生じるかもしれない。しかし、ギネスブック認定世界一のベストセラー、読み直してみると意外と面白い?
※ 登場人物名について補足。作品が英語なので、人物名はすべて英語読みである。しかし日本語字幕では確か「ジーザス」のみ英語名で、他の人はすべてギリシア語読み(だろうか、一般に日本語で用いられている名前)になっていた。しかしそれも妙に思えてきたのと、歴史・宗教上の人物とこの作品のキャラクタを区別するという意図から、このページでは、あえて基本的に登場人物を英語読み(ex. ユダ→ジューダス)での表記に変更。かなり違和感がある名前もあるが……。
有名な(多分)映画。現代(というかこの時点での現代なので70年代)を舞台に、劇中劇の形で描かれる。これを見てハマった。むしろすり込み現象というか、最初に見て一目惚れしたもので、これが唯一絶対という勢いだった(笑・多少他のCDは聞いたけど)。非常に、文句なしの名作。細かいところでは色々あるのかもしれないが、まず名作には違いないと思う。自分が生まれるよりもずっと昔に撮られたとは思えない、レトロさももちろんあるけれど、どこか永遠に新鮮さのある映画だと思う。基本的には実に70年代テイスト(多分・笑)だが、どこか前衛的でもある。
冒頭では、広大なイスラエルの砂漠に若者たちがバスでやってきて、おもむろに十字架などを運び出し、簡易舞台のようなセットを組み始める。メイクするマリー役、髪を梳かすキング・ヘロド役、鞭打ちを練習する兵士役……といった「舞台裏」的な空気をプロローグに、ジーザスが登場すると、舞台は劇中劇の形で古代エルサレムになってゆく。とはいえ、登場人物たちのファッションからして、衣装と現代(70年代)風が混在している。槍を持った兵士に混じって銃を担いだ兵士もいれば、祭司たちは工事現場のような鉄筋セットで歌い、ジューダスは戦車に追いかけられる。しかしこれが、広大なイスラエルの遺跡に自然と混在しているこの感覚がまた素晴らしい。物語はジーザスの死で幕を閉じてしまい、一本の十字架を残して、彼らは再び現実の若者に戻り、バスで走り去ってゆく。
キャストは、ジーザス:テッド・ニーリー、ジューダス:カール・アンダーソン、マリー:イヴォンヌ・エリマン、他。詳しくは別ページにて。
この映画はVHS、DVD化されている。ただしDVDはおそらくリージョン1(北米版)のみ。DVDは、他にも種類があるかもしれないけれど、私が持っているものには英語&スペイン語字幕、仏語吹き替えが付いている(しかし作品の性質上、元音声で見た方が良いと思う。日本では、英語はダメだがフランス語ならば! っていう人は少なそうだけど・笑)。ビデオはレンタルショップなどにもある。サントラCDは国内版もある。
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DVD Region1 NTSC |
英語字幕、スペイン語字幕、 仏語吹き替え 私が持っているのはこれ |
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DVD Region1 NTSC |
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DVD Region1 NTSC |
スペシャル・エディションらしい。'04/08/31発売予定 |
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サントラCD 国内盤 2枚組 |
※ Region1のDVDは日本国内専用DVDプレイヤーでは再生できません。
?とあるのは、この映像作品の経緯をよく知らないので(消極的)。こちらは基本的にステージ版だが、舞台のライブ映像ではなく、映像用に撮影されたもの。映画版とは打ってかわって、全面的にどことなくサイバーな現代あるいは近未来的な演出になっている。映画版に、現代の視点で見るとレトロなお洒落さがあるとしたら、こちらには、やや悪趣味な(笑)パンクテイストの、また別の良さがあり、どちらも好き。しかしながら、ヴィジュアル的差異よりもずっと大きいものは、登場人物それぞれの心理の描き方。映画版も、愛憎劇ではあるがきわめてストイックな印象を強く与えるのに対し、こちらは良くも悪くも生々しく、きわめてドロドロしている。ほとんど同じ楽曲と筋書きを、まったく異なるものにしているのは見事。実はこちらは、実際に見るまでは偏見を持っていて、どうもこのストイックでない感じ、過度に俗っぽい感じがちょっと苦手に違いないと思っていた(単独では好きなジャンルだったとしても、おそらく映画と比べてしまうとダメだろうと)。しかしジェロームが映像で見たいというミーハーな理由で(笑)見てみたところ、別の方向性でハマる。芸術的な観点(?)ではやはり映画版が非常に好きなのだが、こちらも素晴らしい。
キャストは、ジーザス:グレン・カーター、ジューダス:ジェローム・プラドン、マリー:レニー・キャッスル、他。詳しくは別ページにて。
こちらもVHS、DVD化されている。現在DVDはリージョン1(北米版)、リージョン2(多分UK版・PAL方式)がある。特典メイキング映像付き。リージョン1のDVDは、英語&フランス語字幕あり、吹き替えはなし。リージョン2のDVDには字幕がないとのこと(持っていないので詳細は不明)。サントラCDもある(ハイライト盤のみ)。
追記:ついに日本国内版DVD、2004/9/24発売。祝!
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DVD 日本版 Region2 NTSC |
日本語字幕・英語字幕 |
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DVD Region1 NTSC |
英語字幕、仏語字幕 私が持っているのはこれ |
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DVD Region2 PAL |
字幕なし? 未確認。 |
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サントラCD 輸入盤 |
※ Region1のDVDは日本国内専用DVDプレイヤーでは再生できません。
※ PAL版のDVDは日本国内専用DVDプレイヤー(NTSC方式のTV)では再生できません。(PCのDVDドライブで再生可)