ドイツ デュイスブルク・キャスト盤
1996年、ドイツ・デュイルスブルク・キャスト、ドイツ語。全22トラック(22曲ではない。後述)の、一応ハイライト版。
時代が新しめなためか、演奏がクリアーかつ迫力がある。プロローグは低音炸裂、"Lied Des Volkes" ("Do you hear the people sing?") の冒頭も妙に壮麗で、一瞬違う曲かと思うけど、こういうのも好き。しかし何故かウィーン盤よりもドイツ語ミュージカルっぽくないのが不思議。
ハイライト版ゆえに、人によっては出番にかなりの偏りがあるため、公平な感想とは言えないかも。私としては、ベガーズシーンが入っていないのがとても残念。リトル・コゼットも出番なし、そのわりにテナルディエの宿屋の冒頭(お客の会話シーン)まで入っていたりするのは謎。「対決」もないのかと思ったら "Fantine's Tod" ("Fantine's Death") の後半が対決になっている。繋げる意味はわからないけど、入っていたのは嬉しい。
キャストは、皆、実力派風で特に歌が非常に巧いが、本来甲な人が乙で乙な人が甲というのが多いような……。ジャベールとマリウスが辛うじて正統派。ドイツ語だから感覚的に歌詞に入り込み辛いせいもあってか、全体的には「個性的だけど無難」というふしぎな印象のCD。
キャスト
JEAN VALJEAN : | Jerzy Jeszke (JEAN VALJEAN) | Jerzy Jeszke | ★★★★★ | |
JAVERT : | Hartwig Rudolz (JAVERT) | Hartwig Rudolz | ★★★★★ | |
FANTINE : | Cornelia Drese (FANTINE) | Cornelia Drese | ★★★★★ | |
MARIUS : | Felix Martin (MARIUS) | Felix Martin | ★★★★★ | |
COSETTE : | Deborah Dutcher (COSETTE) | Deborah Dutcher | ★★★★★ |
ÉPONINE : | Sanni Luis (ÉPONINE) | Sanni Luis | ★★★★★ | |
THÉNARDIER : | Tom Zahner (THÉNARDIER) | Tom Zahner | ★★★★★ | |
M.THÉNARDIER : | Anne Welte (M.THÉNARDIER) | Anne Welte | ★★★★★ | |
ENJOLRAS : | Martin Berger (ENJOLRAS) | Martin Berger | ★★★★★ | |
演奏(指揮: Nick Davies) | ★★★★★ |
★ は個人的なお気に入り度
キャスト雑感
ジャン・バルジャン: Jerzy Jeszke
アッサリ風味のバルジャン。美声だが普通の人っぽい感じで、冒頭からしてあまり十九年の苦難が感じられない。なぜか次第に老けるどころか逆に若く美形仕様の歌い方に……。
ジャベール: Hartwig Rudolz
朗々とした美声の格好良いジャベール。歌い方や演技に迫力があるわりには、声が美しいせいか、やや弱そうな感じを与えるかも。"Stern" ("Stars") がやたらと切ない叙情派ジャベール。しかし、 "Javert's Selbstmord" ("Javert's Suicide") は素晴らしい! 最後の叫びがちょっと細くて、もうちょっと絶叫系のほうが好みかな。でもそれもまた切なくて良い。素晴らしいのだけど、これぞという決定的なインパクトを残さないのはなぜだろう……。
ファンティーヌ: Cornelia Drese
どうも、儚げなのか強そうなのかよくわからないファンティーヌ。ある意味正しいのかな……? 声は綺麗で、いろいろな表情が出ているんだけど、却ってちょっとこの人のファンティーヌがどういうキャラクターなのかがよく解らない気も。
マリウス: Felix Martin
ウィーン盤の人と似てるなーと思ったら、同じ人だった。が、こちらの方が断然好きな感じ。技術的にもすごく巧くなっている気がする。声のタイプはJérôme Pradonや石井一孝系、ヘタレつつ鼻にかかったような甘さで歌い上げる。歌がなんとなく危なっかしいので☆0.5個分マイナスしているが、すごく好きなマリウス。"Ich heiße Marius Pontmercy!" で名前の発音を敢えてフランス語っぽくしているのも良い。"Schon So Lang" ("In My Life") はかなり爆笑ものの天然ぶり。そして"Morgen Schon" ("One Day More") が素晴らしい。冒頭はとてもヘタレ感たっぷり、甘さたっぷりかと思えば、最後には凛々しく立ち上がるマリウス。私の中で One Day More 最大の見せ場はアンジョルラスの登場だったが、このCDに限ってはマリウスの決意がメイン!
コゼット: Deborah Dutcher
綺麗な声でとても巧いが、妙に人生経験を積んでいそうなところが、コゼットらしさに欠ける。マリウスとのデュエット、マリウスが思い切り甘いヘタレ系なだけに、なにやら思い切り尻に敷いてる感じに……。
エポニーヌ: Sanni Luis
渋くて大人っぽい。私はかなり好きだけど、他のCDと比べるとちょっと異色のエポニーヌ? ドイツ語なのにシャンソンっぽい印象。ということは、この人が一番フランスっぽいのかもしれない。
テナルディエ: Tom Zahner
珍しくダンディな声のテナルディエ。盛り上げ感もあり、表情も巧みで、腹黒さも垣間見えるんだけど、ちょっと社会の根底を這い回る汚さがなく、なんとなく上流っぽいのが微妙。ただ、ほぼ宿屋シーンのみの登場なので、そうとも決めつけられないかな。
テナルディエの妻: Anne Welte
ほぼテナルディエ夫と同じような印象なんだけど、微妙に、本来は綺麗系なのを無理に作り込んだ感じが否めない。
アンジョルラス: Martin Berger
普通に巧いんだけど、「学生その1」って感じの声で、アンジョルラスのカリスマ性が感じられない。
その他:
ハイライト盤のため、ガブローシュ (David Jacobs) は General Lamarque ist tot! しか出てこないのでよくわからない。リトルコゼットは全く出てこないので注意。
司教様 (Willi Welp) が若々しくてちょっとありがたみが薄い。クールフェラック (Perrin Allen) が格好いい。グランテール (Thomas Hurter) は正統派な声過ぎるかも。
購入・試聴
大型CD店、サントラ専門店、通販サイトなどで比較的よく見かける。私はタワレコで購入。
曲目
- Prolog
- Am Ende Vom Tag
- Ich Hab Geträumt Vor Langer Zeit
- Leichte Mädels
- Wer Bin Ich?
- Fantine's Tod
- Herr Im Haus
- Sterne
- Rot Und Schwarz
- Lied Des Volkes
- Schon So Lang
- Mein Herz Ruft Nach Dir
- Morgen Schon
- Nur Für Mich
- Der Erste Angriff
- Trinkt Mit Mir
- Bring Ihn Heim
- Die Letzte Schlacht
- Javert's Selbstmord
- Dunkles Schweigen An Den Tischen
- Die Hochzeit
- Epilog