Hey Mr. Producer!

Hey Mr. Producer!

レ・ミゼラブル単独の作品というわけではないけど、1998年ロンドンで行われたキャメロン・マッキントッシュプロデュース作品のガラ・コンサート。エリザベス女王とエディンバラ公ご臨席、司会にはジュリー・アンドリュースと作曲家陣。コンサートというか、名場面を次々再現という感じで(短縮やアレンジはあるけど)全体的にとても豪華なショーとなっている。

私が観たDVDは台湾版で、ボックス入り。リージョンフリーなのはいいんだけどメニューが中国語。漢字でなんとなく見当は付くもののわかりにくいのが難点。なお、字幕は中国語と英語が選択できる。各歌詞の中国語訳が読めるのは興味深いかも。CDもあるようだけど、映像版より収録曲数は少ない?

ACT I

OVERTURE

OLIVER!

  • Food, Glorious Food

MY FAIR LADY

  • Wouldn't it be Loverly?
  • Quit Professor Higgins
  • The Rain in Spain
  • Get Me to the Church on Time
  • I've Grown Accustomed to Her Face

INTRODUCTION (Julie Andrews)

THE FIX

  • One, Two Three

LITTLE SHOP OF HORRORS

  • Little Shop of Horrors
  • Somewhere That's Green
  • Suddenly Seymour

GODSPELL

  • Day by Day

ANYTHING GOES

  • I Get a Kick Out of You

SONG AND DANCE

  • Variations
  • Unexpected Song

THE BOY FRIEND

  • It's Nicer in Nice

LAUDER

  • I Love a Lassie

FIVE GUYS NAMED MOE

  • Five Guys Named Moe
  • Is You Is or Is You Ain't My Baby?

OLIVER!

  • Consider Yourself
  • You've Got to Pick a Pocket or Two
  • As Long as He Needs Me

MARTIN GUERRE

  • I'm Martin Guerre
  • How Many Tears?

MISS SAIGON

  • The Heat is on in Saigon
  • The Wedding Ceremony
  • The Last Night of the World
  • This is the Hour
  • The American Dream

THE PHANTOM OF THE OPERA

  • The Phantom of the Opera
  • The Music of the Night
  • All I Ask of You

ACT II

FOLLIES

  • Broadway Baby

OKLAHOMA!

  • Oh! What a Beautiful Morning

CAROUSEL

  • Porch Scene
  • You'll Never Walk Alone

INTRODUCTION

COMPANY

  • Side By Side
  • You Could Drive a Person Crazy

A LITTLE NIGHT MUSIC

  • Send in the Clowns

FOLLIES

  • Losing My Mind

COMPANY

  • Being Alive

GYPSY

  • You've Gotta Have a Gimmick

INTRODUCTION

  • (A Little Night Music / The Music of The Night)

TOM FOOLERY

  • Poisoning Pigeons in The Park

CATS

  • Jellicle Songs
  • Memory

LES MISERABLES

  • At The End of The Day
  • I Dreamed a Dream
  • Stars
  • Do You Hear The People Sing?
  • On My Own
  • Bring Him Home
  • One Day More

FINALE

  • Old Friends

あまりに盛り沢山なこのコンサート。そもそも、元の作品を知らないものが多いこともあり、すべてについては書ききれないので、とりあえずレミゼ中心に、他も少し雑感を。

マイ・フェア・レディ

音楽が好きなこの作品。中でも好きな曲中心に取り上げられていて嬉しい。 "Wouldn't it be Loverly?" は昔とてもハマって一日中歌っていた思い出の曲で、思わず一緒に歌ってしまう。冒頭のコーラスが何となく不協和音なのは気のせい? イライザはリズ・ロバートソンという方。ジョナサン・プライスのヒギンズ教授、超かっこいい。モデル体型! 映画版しか見たことがないけど私の本命キャラクターはピカリング大佐なんだけど。最後に、ジュリー・アンドリュースが台詞だけど登場して大喝采という演出も素敵ながら、実際に歌っていた人そっちのけ過ぎて、ちょっとかわいそう……。

マルタン・ゲール

レミゼと同じシェーンベルク&ブーブリル作、フランスが舞台、対立戦争あり人間ドラマあり、クラシカルな旋律と、実際の舞台を見たことはないけれど、やはり音楽が好きな作品。この "I'm Martin Guerre" に使われているメインテーマの旋律はとても名曲。しかし、あまりに短い。短縮で一分にも満たない! と思っていたけど、CDを試聴してみたら前半から入っているような気も……? 映像版でカットされたのかもしれない、残念。歌っているのはデヴィッド・キャンベルというオーストラリア出身の綺麗な方。キメポーズが格好良い! "How Many Tears?" は、個人的にはちょっとばかり眠い。何もこっちをフルに入れてくれないでも。こちらはマリア・フリードマンという方。ちょっとイメージと違うんだけど……。どちらにしても何のシーンなのかこれだけではよくわからないが、司会によると、この後にオープンした(=このコンサートの時点ではその予定の)リメイクバージョンで、オリジナルバージョンには "How Many Tears?" に相当する曲は多分ない(少なくともCDにはない)。

ミス・サイゴン

同じくシェーンベルク&ブーブリル作品のミス・サイゴン。音楽でいえばマルタン・ゲールの方が断然好きなんだけど、それはさておき、リア・サロンガのキム、かーわーいいー! 本来それほど好みのタイプではないのに、この人はとてもかわいい。クリスは先ほどのデヴィッド・キャンベル。ジョナサン・プライスのエンジニアが "American Dream" を歌い上げたかと思うと、これも編集の都合か、息つく暇もなく突如として "The Phantom of the Opera" に突入、頭の切り替えが大変。

オペラ座の怪人

コルム・ウィルキンソンがファントム、マイケル・ボールがラウルと、レミゼファンお馴染みのメンバーでなんだか楽しい。コルムのファントムはそこはかとなく台詞部分がロック。しかもヒゲ面で、よく言えばオジサンの色気? 悪く言えば若干むさ苦しい? 爽やかでないという意味では良いんだけど、やたら男臭いというか、爽やかで無さの方向性が個人的な好みとはどうも違う……。しかしこの後バルジャンの時は全く思わなかったので、これも演技の力なのかと思うと凄い。それはともかく歌がとても素晴らしい! 引き続いてこれでもかーとハイトーンをのばしつつ "Music of The Night" を歌い上げたかと思うと(ただしこれも途中部分からで、慌ただしい)、ラウルが出てきて "All I Ask of You" が繰り広げられるのかと思ったらこれまた一瞬で終わって、影像も音声もほとんどコルムのすすり泣き。いや、いいんだけど折角なのでマイケルも映してよ。流石に大道具はないらしいが、舟はあって動いていた。 "Goooooo!!" という素晴らしいシャウトで花火が炸裂してこのショウの一幕も終わり。

一幕その他

「どこかで聞いたような曲」が色々。 "The Boy Friend" という作品の女性の衣装とセットが可愛い。 "Song And Dance" だったっけ?(これも名前しか知らない……)、アンドリュー・ロイド・ウェバー弟のチェロ奏者ジュリアン・ロイド・ウェバーが登場。顔が似てる! "Oliver!" では、TACで素晴らしいガブローシュをやっていたアダム・サールズが登場。これは1998年の映像なので、ああ3年分成長してるのね! とか妙な感動を覚える。

二幕の前半色々

やはりどこかで聞いた曲が色々。マイケル・ボールが "Losing My Mind" という曲を熱唱。作品名は "Follies" らしいけどこれまた私は曲しか知らない。熱唱といっても熱くはなく、どちらかといえばクール。そして "Gypsy" より、"You've Gotta Have a Gimmick" という、楽しい(?)曲。この後ファンティーヌで登場する、ルーシー・ヘンシャルのセクシーを超越してインパクトの強すぎるお姿とド迫力すぎる歌唱に、目と耳が釘付けに……。しかし、ファンティーヌよりはこんな感じの方が似合っていると思うのは気のせい? その他、途中のMCでは映像でアンドリュー・ロイド・ウェバー&スティーブン・ソンドハイムがピアノ連弾しつつキャメロン・マッキントッシュについての替え歌(?)を歌うというったりしていて、やはり日本とは感性というかノリが違う!

レ・ミゼラブル

というわけでやっと本題。このショーのトリがレ・ミゼラブル。

"At The End of The Day"

ああレミゼだー! と感じる、大好きなモントレイユ・スュール・メールの群衆シーン。この曲は、短縮しても雰囲気はそのまま。ある意味、地味な曲(大がかりなソロナンバーではないという意味で)だと思うけど、これを最初に取り入れているのが素敵。ごく自然にレミゼの世界に誘われる感じ。

"I Dreamed a Dream"

ルーシー・ヘンシャルのファンティーヌが登場。この方もTACの映像で見たけれど、髪型が違うのと、さきほどのお姿を見た後ではかなりの違和感。笑 しかしもちろん先の役とは全く違い、鬼気迫って怖いファンティーヌ。しかし個人的にこの曲は短縮でちょうど良い……。もちろん感動するところもあるが、ちょっと同じような調子で長過ぎると感じる曲で、レミゼで唯一寝そうになったことのあるナンバーなので……でも、これはTACより演技派仕様というか、とにかくすごい。

"Stars"

そしてフィリップ・クワストのジャベールが登場。世界のスタンダードなのか、またしてもこの人である。良いけど。相変わらず格好良いが、TAC映像に比べるとちょっと年をとったかも。しかし愛着のある曲だけに、短縮具合が気になる! 始まりが途中の "Stars, in your multitudes..." からというのも感覚的に入り込みづらいが、仕方がない。このナンバーは元からして派手な動作をするわけでもないので、TACのとイメージ的にはそんなに変わらないが、跪いて祈るのには素直にときめき、そして最後のポーズが、ああ素敵。警棒を収める仕草もかっこいい! と感動するにはちょっと慌ただしい "Stars" だが歌も表情も相変わらず素晴らしく、しかし……マイクが額にぽつんとあるのが、舞台で見ている分には良いんだろうけど、影像でアップにされると微妙に気になってしまう。短縮というよりこのせいで、陶酔できないかも。笑

"Do You Hear The People Sing?"

このナンバーは巧く短縮されているように思う。まずアンジョルラスが普通に歌い、他三人が "Will you join in our crusade? Who will be strong and stand with me?" → "Beyond the barricade is there a world you long to see?" → "Then join in the fight that will give you the right to be free!" とそれぞれ歌い継いで、一コーラス分合唱。しかしアンサンブルの衣装の見分けが付いていなくて元のパートと変えられると誰が誰なのかわからない。それにしても全体的にキャストがいかつい。アンジョルラスはハル・ファウラーという、顔がやけに大きくてガタイのいい、眼光鋭い方。先ほど「回転木馬」に出ていた。他の方々も妙にコワモテ。背景にバリケードの模様(?)が出ているのは、何か無くてもいいんじゃ……という感じも。

"On My Own"

リア・サロンガのエポニーヌ。前半と、ところどころのリピート部分をカットした短縮版。キムの衣装のときの方が可愛いなーと思ったけど、エポニーヌでもやっぱり可愛い。それはともかくとして、歌がやはり素晴らしい。この人の、"I love him" を繰り返しながら次第に夢想から現実に移行していく感じがとても好き。そして余韻もなにもあったものではなく最後の方に被せて "Bring Him Home" の前奏が開始される。ああ、慌ただしいけど、いろいろ詰め込んでくれてありがとう!

"Bring Him Home"

そして、コルムのバルジャン。実はこれまたアップ映像だとウィッグの境目が気になって気になって気になってああ画像処理を入れたい! と集中できなかったんだけど。この曲は "God on high..." と普通に始まって途中をカット、でもさほど違和感がないかも。マリウスはおらず、ひとりで突っ立って歌っている感じなのは、次に "One Day More" を控えているという流れの都合だろうけど、ちょっと寂しい。そして ほぉーーーーーむ と美しいハイトーンのバックには既に "One Day More" のイントロ、そして直後にそのままの体勢で わんでいもー! となるのでまたしても頭の切り替えが大変。

"One Day More"

ストーリーの流れからすると曲順がおかしいけれど、そこはラストに相応しい壮大に盛り上がる曲であり、とても素晴らしいので気にならない。なお、この曲でほぼこのコンサートもおしまい。良いところに来ている、さすがレミゼ、さすがOne Day More! そして、この曲は短縮されていない。私の曖昧な記憶の限りではかなり舞台に忠実な仕様で、テナルディエ夫妻も場所は違うけどしっかり穴から顔を出している。それにしてもアンジョルラスはドスが効きすぎでこわいよー。 "One more day before the storm!" の吼えるようなバリトン声。私的には顔と体型も含めてアンジョって感じでは全然ないけど、でも実は好きなタイプの声ではある。コゼットはマリー・ザモラとあるので、パリ盤CDで聴けるコゼットの人らしい? これだけの出演では判別できないけど。最後にはファンティーヌも出てきて、バックは三色旗でライトアップ。エリザベス女王の前で、こんなにもフランス愛国感を! と余計な感心をしてみる。最後には皆と共に勢いよく拳を突き上げるファンティーヌ、ちょっと素入ってる? と思わせられる雄々しさ……。この人、TACのフィナーレで指笛を吹いていたのもビックリしたのよね。しかし素晴らしいラストだった。

フィナーレ

司会のジュリー・アンドリュースの "Hey, Mr. Producer!" の掛け声で、キャメロン・マッキントッシュがキルトの正装姿で登場。微妙な歌も披露。最後は "Old Friends" という曲の大合唱。

まとめ

とても見応えのあるショー。それぞれに部分的とはいえ、歌もダンスもお芝居も弾き語りも色々ありで楽しい。個人的には、ダンスやコミカルなシーンには興味がないんだけど。そして意図的にだと思うが、暗いシーンは少なく、前向きに盛り上がるシーンをセレクトしてある印象。暗いとはいってもちょっと可哀想な曲がある程度で、とにかく人死にや暴力的なシーンなどは避けた感じ。明るいコンサートなので、陰惨なシーンは困るのだろうけど、基本的に私の好みはレミゼに限らず悲劇シーンにあるので、そこはちょっと残念かも。ついでに、ジャベールの出番が "Stars" というのはとても当然なんだけど、せっかく動きのあるショーなので、もっとアクション的な場面も見たかったな、対決とか。オペラ座の怪人も、有名作品なんだからもうちょっと長くやってくれてもいいのに。全体的にとても素晴らしいが、やはりレミゼのみに限って言えば、TACの方が良い。色々なミュージカルに詳しいともっと楽しめるのだろう。