フランス語で歌おう

フランス語で「24601」

 ジャン・バルジャンの囚人番号は、日本語版では語呂の都合で「24653」となっているが、英語版(仏語版も)では「24601」。舞台ではこの囚人番号が非常に効果的に使われている。なお原作でも最初の囚人番号は24601だが、特に頻繁には出てこずに、再逮捕で9430に変わったりもする。

 ついでに、出来心で仮出獄の最後のやりとりをカタカナ化。対比は勝手な訳および日本語版の歌詞。

Cinq ans pour tes méfaits
♪サンコン プー テ メフェ

Le reste pour avoir voulu fuir
♪ル レストゥプー アヴォワ ヴォリュフィール

Oui, 24601
♪ウィ ヴァンキャッスィスオーアン

Je m'appelle Jean Valjean
♪ジュマペール ジョン ヴァルジョン

Et moi Javert
♪エ モワ ジャヴェー

N'oublie jamais mon nom
♪ヌーブリ ジャメ モン ノン

Ne m'oublie jamais,
♪ヌ ムブリ ジャメ

24601!
♪ヴァンキャッスィスオーアーン

(犯罪に対しては五年である)
♪けいはごねんだぞ

(残りは逃げようとした事に対してだ)
♪あとはだつごくのつみ

(いいか、24601号)
♪にーよんろくごーさん

(俺の名はジャン・ヴァルジャンだ)
♪おれはじゃんばるじゃん

(そして私はジャベールである)
♪おれはじゃべーる

(決して私の名を忘れるなよ)
♪わすれるーなーよー

(決して私を忘れるなよ、)
♪おれのなをー

(24601号!)
♪にーよんろくごーさーん

 ……英語版もそうなのだけれど、「俺を決して忘れるなよ!」と念を押してるのがなんか可愛くて好き。

フランス語で「分かち合うものはない」

Je suis la loi que personne ne bafoue
Et je lui crache sa pitie au visage
Noir ou blanc, hors la loi ou dedans
Noir ou blanc, c'est Javert ou Valjean

I am the law and the law is not mocked
I'll spit his pity right back in his face
There is nothing on earth that we share
It is either Valjean or Javert.

俺は法律 なめるな
叩き返す 情けは
分かち合うものはない
何もないバルジャンとジャベール

 前半二行は英語版・日本語版の内容と大差ないが、ここはシンプルながら独自の後半に注目。単語の意味は noir=黒、blanc=白、ou=または(or)、hors=〜の外に、dedans=〜の内に、c'est=it is として、しつこいがついでに雰囲気重視のカナ化。

Noir ou blanc
♪ノワ ウ ブロン

hors la loi ou dedans
♪オウ ラ ロワ ウ ドゥドン

JNoir ou blanc, c'est
♪ノワ ウ ブロン セ

Javert ou Valjean
♪ジャヴェフ ウ ヴァルジョーン

(黒か白か)
♪わかちあう

(法の外か法の内か)
♪ものはない

(黒か白か、それは)
♪なにもない

(ジャベールか、ヴァルジャンかということである)
♪ばるじゃんとじゃべーる

 「分かち合うものはない」、という直截な日本語版も良いが、「黒か白か」という表現も好きだ。ヴァルジャンかジャベールか、いずれかしかない。もはや個人対個人ということがらを疾うに越えて象徴的なものとなっていることがよくわかる。

 ところで、流れ的に"C'est Valjean ou Javert"のほうが順番としてはしっくりくる気がするのだが(音的にもだが、意味的にも)逆なのはなぜだろう?